この記事のポイント
- 外国人採用の成功には、在留資格の確認や労働関連法規の遵守といった法的注意点の理解が不可欠です。
- 採用後のミスマッチを防ぐため、選考段階での文化的背景を考慮した評価と、透明性の高い情報提供が求められます。
- 早期離職を防ぐ鍵は、日本人社員向けの異文化理解研修やメンター制度など、組織的な受け入れ体制の構築です。
- 外国人材の定着には、業務支援だけでなく、住居探しや行政手続きといった生活面でのサポートが極めて重要です。
- 自社に最適な人材紹介会社や登録支援機関といったパートナー選びが、採用活動全体の成否を左右します。
少子高齢化による労働力不足が深刻化する日本において、外国人材の採用は多くの企業にとって重要な経営戦略の一つです。多様なスキルや視点を持つ人材を獲得することは、企業の成長やイノベーションを加速させる大きな可能性を秘めています。一方で、法的手続きの複雑さや文化・習慣の違いなど、外国人採用特有の「落とし穴」も存在します。これらの注意点を事前に把握し対策を講じなければ、採用の失敗や早期離職を招く恐れがあります。
外国人採用を成功させるためには、企業が知っておくべき法的注意点、よくある落とし穴とその回避策、外国人材の定着を促進する具体的なポイントを包括的に理解することが不可欠です。本記事では、企業が外国人採用で直面する可能性のある課題を体系的に整理し、失敗を回避するための具体的な注意点を解説します。法務・労務管理から異文化コミュニケーション、採用プロセス、定着支援に至るまで、外国人材が長く活躍できる環境を整えるための実践的な知識を提供し、貴社のグローバル化を成功に導く一助となることを目指します。
外国人採用が増加する背景と企業が知るべき注意点
外国人採用の検討にあたって、まず国内の労働市場におけるマクロな動向と、採用企業が直面しやすい課題を把握することが重要です。統計データから現状を理解し、採用におけるメリットとリスクを天秤にかけることで、自社が取るべき戦略の輪郭が見えてきます。ここでは、外国人採用を取り巻く現状と成功のために知っておくべき全体像を提示します。

外国人労働者数増加の現状と企業が抱える課題
国内の生産年齢人口の減少を背景に、日本で働く外国人労働者の数は年々増加しています。厚生労働省が2026年1月に公表した「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末現在)」によると、外国人労働者数は約257万人に達し、過去最高を更新しました。この事実は、外国人材が多くの産業において事業継続に不可欠な存在であることを示しています。
しかし、採用への関心が高まる一方で、多くの企業が共通の課題に直面しています。採用段階では、言語の壁や文化的背景の違いから、候補者のスキルや人柄を面接だけで正確に見極めることが難しいという問題があります。また、採用後も職場でのコミュニケーションギャップや、慣れない日本での生活に対する不安から、能力を発揮できずに早期離職してしまうケースが後を絶ちません。
これらの採用・定着における課題は、適切な準備と対策を講じることで乗り越えることが可能です。成功のためには、法制度の理解、異文化への配慮、組織的なサポート体制の構築が求められます。
外国人材を受け入れるメリットとリスクの事前把握
外国人材の採用は、単なる労働力確保にとどまらず、企業に多くのメリットをもたらす可能性を秘めています。多様なバックグラウンドを持つ人材が加わることで、新たな視点やアイデアが生まれ、イノベーションの創出や組織の活性化につながります。また、海外市場への展開を考える企業にとっては、現地の文化や商習慣に精通した人材が強力な戦力となるでしょう。
一方で、これらのメリットを享受するためには、潜在的なリスクや「落とし穴」を事前に理解し備えておくことが極めて重要です。主なリスクとしては、以下の点が挙げられます。
- 法的リスク:在留資格の不備による不法就労助長罪など、コンプライアンス違反のリスク。
- コミュニケーションコスト:言語や文化の違いによる誤解や摩擦を解消するための時間的・人的コスト。
- ミスマッチによる早期離職:スキルやカルチャーの不一致による採用コストの損失。
- 労務管理の複雑化:社会保険や税務手続きなど、日本人とは異なる配慮が必要な場面。
これらのリスクは決して無視できるものではありません。しかし、事前に注意点を学び、一つひとつ丁寧に対策を講じることで、リスクを最小限に抑え、外国人採用のメリットを最大限に引き出すことが可能になります。
【法的・制度上の注意点】外国人材雇用で遵守すべき法令と手続き
外国人材を雇用する上で、法律や制度の遵守には厳格さが求められます。「知らなかった」では済まされない重大なコンプライアンス違反は、企業の社会的信用を大きく損なう可能性があります。特に「在留資格」「労働条件」「社会保険・税金」の3つの側面から、企業が守るべき法的注意点を正確に理解しておくことが不可欠です。

在留資格の種類と取得・更新時の確認事項
外国人が日本で働くためには、その活動内容に応じた就労が認められる在留資格が必要です。査証(ビザ)は上陸審査の要件の一つで、在留資格とは異なります。企業は採用選考の段階で、候補者が従事する予定の業務内容と、その人が保有(または取得予定)する在留資格で許可されている活動内容が一致しているかを厳密に確認しなければなりません。この確認を怠り、就労が認められていない活動をさせた場合、企業の担当者等も「不法就労助長罪」に問われ、3年以下の拘禁刑若しくは300万円以下の罰金が科される可能性があります。
| 項目 | 主な確認事項 | 注意点・リスク |
|---|---|---|
| 在留資格 |
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| 労働条件・賃金 |
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| 社会保険・税金 |
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採用時には、在留カードや旅券等で在留資格と就労の可否を確認します。在留カードが交付されている場合は原本の提示を受け、記載内容を確認しましょう。主なポイントは以下の通りです。
- 表面:在留資格の種類、在留期間の満了日、就労制限の有無
- 裏面::資格外活動許可の有無(留学生をアルバイトで雇用する場合など)
特に留学生をアルバイトとして雇用する際は、在留カード裏面の「資格外活動許可欄」を確認し、「許可」の記載があること、労働時間が原則として週28時間以内であることを遵守する必要があります。また、在留資格には期限があるため、従業員の在留期間満了日を管理し、更新手続きをサポートする体制も重要です。更新手続きには企業側が準備すべき書類もあるため、出入国在留管理庁のウェブサイトなどで事前に手続きの流れを確認しておくことが求められます。
労働条件・賃金設定における日本人と同等の扱い
外国人労働者に対しても、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法といった日本の労働関係法令が、日本人従業員と同様に適用されます。国籍を理由として、賃金、労働時間、休日、福利厚生などの面で不利益な取り扱いをすることは法律で禁じられています。「外国人だから」という理由で、日本人より低い賃金を設定することは明確な違法行為です。
賃金は業務内容、責任、経験などを踏まえて設定し、国籍を理由に差を設けてはいけません。在留資格に日本人と同等以上の報酬要件がある場合は、その基準も満たす必要があります。
雇用契約を締結する際には、労働条件を明記した「雇用契約書」または「労働条件通知書」を交付する義務があります。この際、本人が十分に理解できる言語(母国語や英語など)で作成・併記するといった配慮が、トラブルを未然に防ぐ上で非常に有効です。
社会保険・税金に関する加入義務と説明のポイント
社会保険(健康保険、厚生年金保険)および労働保険(雇用保険、労災保険)は、国籍にかかわらず、法律で定められた要件を満たす労働者全員に加入義務があります。短期の雇用契約でも、週の所定労働時間や契約期間が一定の基準を満たす場合は、必ず手続きを行う必要があります。
特に外国人材にとって分かりにくいのが税金の仕組みです。特に住民税は前年の所得に対して課税され、翌年の6月から給与天引きが始まる「後払い」の制度です。この仕組みを事前に説明しておかないと、入社2年目に手取り額が急に減り、従業員が混乱したり会社への不信感を抱いたりする原因になります。
また、年金制度についても、将来日本に永住しない可能性がある外国人には理解が難しい部分があります。制度の概要に加え、帰国時に要件を満たせば、これまで支払った保険料の一部が返還される「脱退一時金」の制度があることを伝えておくと、丁寧な説明になります。これらの手続きは複雑なため、必要に応じて社会保険労務士や税理士といった専門家の助言を求めることも検討しましょう。
【採用段階の注意点】ミスマッチを防ぐ選考と契約のポイント
採用後のミスマッチは、早期離職の一因となる場合があり、企業にとって損失となります。外国人材のスキルや文化背景を適切に評価し、入社後の「こんなはずではなかった」を防ぐためには、募集から選考、契約に至る各段階で、日本人採用とは異なる注意深いアプローチが求められます。

求人募集と情報提供で明確にすべきこと
ミスマッチを防ぐ第一歩は、求人段階での透明かつ具体的な情報提供です。外国人材は、日本の労働環境や企業文化について限られた情報しか持っていないことが多いため、企業側がリアルな情報を積極的に提供する必要があります。
| 項目 | 避けるべき点・注意点 | 推奨される対応・ポイント |
|---|---|---|
| 求人情報提供 |
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| 面接での評価 |
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| コミュニケーション |
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求人票を作成する際は、以下の点を明確にし、可能であれば多言語(最低でも英語)で記載することが望ましいです。
- 具体的な業務内容:担当する業務の範囲、使用するツール、チーム構成、期待される役割などを詳細に記述します。
- 必須・歓迎スキル:専門スキルだけでなく、必要な日本語レベル(例:JLPT N2相当のビジネス会話能力)も具体的に示します。
- 労働条件:給与(月給・年収)、賞与の有無と実績、昇給制度、評価制度、平均的な残業時間、有給休暇の取得率などを正直に記載します。
- 企業文化:社内の雰囲気、コミュニケーションの取り方、服装規定、福利厚生など、職場の実態が伝わる情報を提供します。
企業の魅力的な側面だけでなく、厳しい面や課題も率直に伝えることで、候補者は入社後の働き方を現実的にイメージし、納得感を持って選考に進むことができます。この段階での誠実なコミュニケーションが、信頼関係の構築につながります。
異文化を考慮した面接と評価のポイント
面接は候補者の真の能力やポテンシャルを見極める重要な機会ですが、日本独自の面接スタイルが外国人候補者の評価を誤らせる可能性があります。例えば、「あなたの長所と短所は?」といった抽象的な質問は、候補者の意図とは異なる印象を与えかねません。
異文化を考慮した面接では、以下の点を意識することが重要です。
- 具体的な行動・実績に基づく質問:「これまでの経験で、最も困難だったプロジェクトは何ですか?その際、あなたは具体的にどう行動し、どのような結果を出しましたか?」といった、過去の行動を深掘りする質問が有効です。
- スキルの再現性の確認:職務経歴書に記載されたスキルについて、「そのスキルを使って、当社のこの課題をどう解決できますか?」など、自社の状況に置き換えて質問することで、スキルの応用力を測ります。
- 双方向のコミュニケーション:面接の最後に、候補者からの質問時間を十分に確保し、疑問や不安を解消する場を設けます。候補者の質問内容から、企業理解度や入社意欲を測ることも可能です。
- 差別と受け取られかねない質問の回避:出身国や宗教、家族構成など、業務遂行能力とは無関係なプライベートな質問は厳禁です。面接官全員がこの点を理解するよう、事前のトレーニングが必要です。
日本語能力の評価においても、資格の有無だけでなく、実際の会話能力や業務指示の理解力を重視することが重要です。
雇用契約書・労働条件通知書の多言語化と丁寧な説明
採用が内定し、雇用契約を締結する段階では、契約内容の誤解を徹底的に排除することが最も重要です。労働基準法では労働条件を明記した書面(労働条件通知書)の交付が義務付けられていますが、外国人材に対しては、その内容を理解できるよう特別な配慮が求められます。
効果的な方法は、母国語または本人が流暢に話せる言語(英語など)で翻訳・併記した契約書や通知書を用意することです。これにより、「日本では当たり前」とされるような時間外労働や休日出勤のルールについて、認識の齟齬を防ぎます。
書面を渡すだけでなく、対面で内容を丁寧に説明し、疑問点がないかを確認する時間も設けましょう。このプロセスを丁寧に行うことが、入社後の信頼関係を築くための土台になり、将来的な労務トラブルを未然に防ぐことになります。
【定着支援の注意点】異文化理解と職場環境づくりで早期離職を防ぐ
優秀な外国人材を採用できたとしても、その人材が能力を最大限に発揮し、長く会社に貢献できるかは、入社後の受け入れ体制にかかっています。文化や習慣の違いによるコミュニケーションギャップを解消し、外国人材が「歓迎されている」と感じられる職場環境を整えることが、早期離職を防ぎ、定着を成功させるための鍵となります。

日本人社員向け異文化理解研修の実施
外国人材の定着を妨げる最大の要因の一つは、受け入れ側の日本人社員の異文化理解不足です。外国人材に日本文化への適応を一方的に求めるのではなく、まず受け入れる側が多様な文化背景を学び尊重する姿勢が不可欠です。
有効な手段として、日本人社員を対象とした研修の実施が挙げられます。具体的には以下の内容が考えられます。
- 異文化コミュニケーション研修:直接的な表現を好む文化(ローコンテクスト文化)と、空気を読むことを重視する日本の文化(ハイコンテクスト文化)の違いを学び、円滑なコミュニケーション方法を習得します。
- やさしい日本語研修:外国人に分かりやすい言葉遣いや話し方を学びます。専門用語を避け、一文を短くするなど、少しの工夫でコミュニケーションの質が向上します。
- アンコンシャス・バイアス研修:無意識の偏見や固定観念に気づき、それが行動に与える影響を学ぶことで、公平な視点を養います。
こうした研修を通じて、組織全体で多様性を受け入れる土壌を育むことが、外国人社員が心理的安全性を感じながら働く環境の第一歩となります。
円滑なコミュニケーションを促す言語サポートとツールの活用
言語の壁は、業務の正確性や生産性に直結する障壁です。日本語能力が高い人材でも、業界特有の専門用語やビジネス上の微妙なニュアンスを理解するのは容易ではありません。企業側が言語の壁を低くするための工夫が求められます。
まず、就業規則や業務マニュアル、安全衛生に関する資料など、重要な社内文書を多言語化することが基本です。最低でも英語に対応しておくことが、外国人材の理解を助けます。
日々のコミュニケーションでは、チャットツールに搭載されている自動翻訳機能やスマートフォンの翻訳アプリを利用するのも有効です。ただし、機械翻訳は完璧ではなく、誤訳のリスクも伴います。重要な指示や確認事項は、機械翻訳を補助的に使用し、「やさしい日本語」を使った対面でのコミュニケーションや図示を交えた説明で相互に理解を確認することが重要です。
メンター・バディ制度による孤立防止とサポート
新しい環境、特に異国での就業は、業務上の困難だけでなく文化的な孤立感や精神的なストレスを伴います。こうした不安を和らげ、早期に職場に馴染むためのサポートとして、メンター・バディ制度の導入が非常に有効です。
この制度は、新たに入社した外国人社員一人ひとりに業務上の上司とは別に、相談役となる先輩社員(メンターやバディ)を任命します。メンターは業務の進め方に関する疑問に答えるだけでなく、日本のビジネスマナーや社内の人間関係、日常生活の困りごとなど、公私にわたる相談相手となります。
気軽に話せる存在がいることは外国人社員にとって大きな心の支えになり、孤独感を軽減します。また、メンター役の日本人社員にとっても、異文化理解を深め、自身のマネジメントスキルを向上させる良い機会になります。組織的なサポート体制を構築することで、個人の努力だけに頼らない、持続可能な定着支援が実現します。
外国人材の定着を後押しする生活サポートとメンタルケア
外国人材が日本で安定して長く活躍するためには、職場でのサポートだけでは不十分です。慣れない土地での生活基盤を整えるための支援や、環境の変化に伴う精神的な負担へのケアなど、プライベートな側面にも目を向けた包括的なサポートが、従業員のエンゲージメントと定着率を大きく向上させます。

住居探し・行政手続きなどの生活サポート
外国人にとって、来日直後の生活セットアップは非常に困難な作業です。特に住居の賃貸契約は、言語の壁や保証人が必要となる日本特有の商習慣があるため、大きなハードルとなります。企業が社宅を提供したり、連帯保証人になったり、不動産会社とのやり取りをサポートしたりする支援は、従業員に大きな安心感を与えます。
その他の生活関連手続きでは、多くの外国人材がつまずきやすいポイントがいくつかあります。
- 市役所・区役所での住民登録、国民健康保険の加入対象者はその加入手続き
- 銀行口座の開設
- 携帯電話やインターネット回線の契約
- 公共料金(電気・ガス・水道)の支払い方法
これらの手続きに人事担当者やメンターが同行したり、手続き方法をまとめた多言語のマニュアルを用意したりするだけでも、外国人社員の負担は大幅に軽減されます。こうした業務外のサポートは、従業員が「会社に大切にされている」と感じるきっかけになり、結果として仕事への集中力や会社への貢献意欲を高めます。
メンタルヘルスケアと相談体制の構築
母国を離れて異文化環境で生活することは、本人が自覚している以上に大きな精神的ストレスを伴います。言葉の壁によるコミュニケーション不足や文化の違いによる疎外感、家族や友人と離れている孤独感が重なり、メンタル不調に陥るケースも少なくありません。
企業は、こうした精神的な負担に早期に気づき、対応できる体制を構築することが重要です。具体的な取り組みには以下のものが挙げられます。
- 定期的な1on1ミーティング:上司が週に1回、または月に1回定期的に面談を設け、業務の進捗や体調、プライベートでの困りごとなどをヒアリングします。話しやすい雰囲気を作ることが大切です。
- 相談窓口の設置:人事部や専門のカウンセラーなど、直属の上司以外に相談できる窓口を設けます。母国語で相談できる外部のEAP(従業員支援プログラム)サービスと契約することも有効です。
- コミュニティ形成の支援:同じ出身国の社員同士の交流会や、社内イベントを企画し、社内での孤立を防ぎ、仲間意識を育む機会を提供します。
メンタルヘルスの問題は、生産性の低下や突然の離職に直結する重要な経営課題です。従業員が心身共に健康な状態で能力を発揮できる環境を整えることは、企業の責務であり、持続的な成長のための投資です。
信頼できる支援機関の選び方と活用ポイント
外国人採用における法的手続きや受け入れ体制の構築には専門的な知識が必要です。すべてのプロセスを自社だけで完結させるのは難しいため、人材紹介会社、登録支援機関、監理団体など外部の専門機関と連携することが、採用成功の確率を高める手段となります。しかし、数多く存在する支援機関の中から、自社のニーズに合った信頼できるパートナーを見つけることが、一つの大きな課題です。

各支援機関(人材紹介、登録支援、監理団体)の役割と特徴
外国人採用をサポートする支援機関は、その役割や対象とする在留資格によって主に3つの種類に分けられます。それぞれの特徴を理解し、自社の目的や採用したい人材像に合わせて選択することが重要です。
- 人材紹介会社:企業の採用要件に合った外国人材を紹介するサービスです。専門職(技術・人文知識・国際業務など)から特定技能まで、幅広い在留資格の人材を対象とします。採用業務を効率化できるメリットがありますが、採用時の紹介手数料は契約先や条件によって異なります。
- 登録支援機関:在留資格「特定技能1号」の外国人材を受け入れる企業のため、受入れ機関が作成する支援計画に基づき、委託された支援を実施する機関です。住居の確保、各種手続き、日本語学習の機会提供など、生活面と就労面の支援を包括的に行います。支援は受入れ機関が自ら実施することもでき、登録支援機関への委託は任意です。
- 監理団体:技能実習制度の団体監理型で技能実習生を受け入れる企業(実習実施者)の指導・監督を行う非営利団体です。実習計画の認定申請や定期的な監査、実習生からの相談対応など、制度の適正な運用をサポートします。団体監理型では監理団体が関わりますが、企業単独型では監理団体を介しません。
これらの機関はそれぞれ専門分野が異なるため、自社が採用したい人材像や目的を明確にした上で選ぶ必要があります。
最適なパートナーを選ぶための比較検討基準
自社に最適な支援機関を選ぶことは、採用活動全体の成否を左右する重要な決断です。支援機関を選ぶ際には、費用だけでなく以下の複数の視点から総合的に比較検討することが求められます。
- 実績と専門性:自社と同じ業種や採用したい人材の国籍での支援実績が豊富かどうか、特定の在留資格に対する深い知識やノウハウを持っているか。
- サポート体制の具体性:採用後の定着支援やトラブル対応で、具体的にどこまでサポートしてくれるか、また担当者とのコミュニケーションは円滑であるか。
- 許認可の有無とコンプライアンス意識:必要な許認可(例:有料職業紹介事業許可、登録支援機関の登録)を国から得ているかどうか、法令遵守への姿勢が徹底されているか。
- 費用体系の透明性:どのサービスに対して、いくらの費用がかかるのかが明確に提示され、追加費用の発生条件も事前に確認することが重要です。
しかし、多くの企業担当者にとって、複数の支援機関から情報を収集し比較検討する作業は大きな負担となることがあります。支援機関側も、営業リソース不足やWebでの集客ノウハウの課題を抱えている場合があり、採用企業が必要な情報に効率的にたどり着きにくい現状が存在します。
このような情報収集の課題に対し、外国人採用ポータルのような、複数の支援機関の情報を横断的に検索・比較できるプラットフォームを活用することも一つの有効な手段です。[1]ポータルでは、地域や対応可能な在留資格、業種といった条件で自社に合った候補を絞り込み、制度理解や費用感といった導入前の不安も相談できるため、効率的かつ安心してパートナー探しを進められる可能性があります。
よくある質問(FAQ)
最後に、外国人採用に関して企業の担当者から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。
Q. 在留資格の申請は企業が行う必要がありますか?
在留資格の変更・期間更新は、原則として外国人本人が地方出入国在留管理局に申請します。しかし、海外から人材を呼び寄せる際の「在留資格認定証明書交付申請」や、在留期間の更新申請では、企業が用意する書類(雇用契約書の写し、会社の登記事項証明書など)があります。そのため、在留資格認定証明書交付申請では受入れ企業の職員が代理人として申請できます。企業は必要書類の準備なども行います。
Q. 日本語能力が低くても採用できますか?
採用可能かどうかは、業務内容と在留資格の要件によります。例えば、専門的な技術職で社内コミュニケーションが英語で行える環境があれば、高い日本語能力が必須でない場合もあります。一方で、「特定技能1号」では分野ごとに定められた日本語試験等の合格が求められ、例えば介護分野ではN4相当以上等の日本語試験に加えて介護日本語評価試験も必要です(介護職種の技能実習2号を良好に修了した方等は免除)。なお、在留資格「介護」は介護福祉士の資格が要件となる別の制度です。資格の有無にとどまらず、学習意欲やコミュニケーションに対する姿勢等を総合的に評価することが重要です。
Q. 文化の違いでトラブルになった場合、どう対応すればよいですか?
重要なのは、一方的に相手の行動を否定せず、「なぜそのような行動をとったのか」という文化的な背景を理解しようとする姿勢です。その上で、日本の労働慣行や社内のルールについて、なぜそれが必要なのかを丁寧に説明し、相互理解を深めます。トラブルを未然に防ぐためには、宗教上の配慮(祈りの時間や食事制限など)や、日本独自の「報・連・相」といったコミュニケーションルールを事前に明確化しておくことが有効です。また、当事者間での解決が難しい場合に備えて、人事部やメンターが相談に乗る窓口を設けておくことも大切です。
Q. 外国人材にも日本人と同じ賃金を支払う必要がありますか?
一律に同額が必要なわけではありません。労働基準法では、国籍、信条、社会的身分を理由として賃金、労働時間その他の労働条件について差別的取扱いを禁じています。賃金は業務内容、責任、経験などを踏まえて設定します。在留資格ごとに日本人と同等以上の報酬要件がある場合は、その基準も満たす必要があります。「外国人だから」という理由で低い賃金を設定することは、明確な法律違反です。
Q. 採用後、定期的な報告義務はありますか?
報告義務の有無は、雇用する外国人の在留資格によって異なります。例えば、「特定技能」外国人を受け入れる企業は、年1回、受入れ状況や支援状況を出入国在留管理庁に届け出る義務があります。また、「技能実習」には団体監理型と企業単独型があり、監理団体が関わるのは団体監理型です。一方で、「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格には定期的な報告義務はありません。ただし、外国人雇用状況の届出は、外交・公用の在留資格の人と特別永住者を除く外国人の雇入れ・離職時に必要です。雇用保険の被保険者は資格取得届・喪失届で、それ以外は外国人雇用状況届出書でハローワークに届け出ます。
参考文献
- [1] 外国人採用ポータル_サービス資料