この記事のポイント
- 技能実習2号を良好に修了した実習生は、原則として試験免除で特定技能1号へ移行できる。
- 特定技能へ移行する最大のメリットは、最長5年以上の長期雇用が可能となり、人材の安定確保と採用・教育コストの削減につながること。
- 移行手続きには在留資格変更許可申請が必要で、登録支援機関への委託費用などを含めると数十万円のコストと2〜3ヶ月の期間が目安となる。
- 企業は特定技能外国人に対し、住居確保や公的手続きの支援を含む「支援計画」の作成・実施と、四半期ごとの定期報告が義務付けられている。
- 信頼できる登録支援機関を見つけるには、「外国人採用ポータル」のような比較マッチングサービスを活用することが有効である。
技能実習生を雇用中の製造業人事責任者の皆様へ。人手不足が深刻化する中、既に貴社で活躍している技能実習生は、かけがえのない貴重な戦力となっていることでしょう。彼らが実習期間を終えた後も、引き続き自社で活躍してもらう方法はないか、とお考えではありませんか?その有力な選択肢が「特定技能」への移行です。
本記事では、既存の技能実習生を特定技能へ移行させる際の具体的な手続き、条件、費用、そして企業側が得られるメリット・デメリットについて、網羅的に解説します。特定技能と技能実習生の違いを正しく理解し、貴社の人材戦略を成功に導くための実践的な情報を提供します。
既存の技能実習生を特定技能へ移行させる条件と全体像
現在雇用している技能実習生を特定技能へ移行させるためには、対象となる実習生が特定の要件を満し、企業側が定められた手続きを踏む必要があります。最も重要なポイントは、技能実習で培った技能が、移行先の特定技能の業務区分と関連していることです。この整合性が取れていれば、試験免除といった大きなメリットを享受しながら、スムーズな移行が実現できます。まずは、この移行制度の基本的な仕組みと資格要件を正確に把握しましょう。
特定技能外国人としての受入れ区分と移行対象者
特定技能の在留資格は、求められる技能水準によって「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類に区分されています。
特定技能1号は、特定の産業分野において、相当程度の知識または経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの資格です。一方、特定技能2号は、同分野で熟練した技能を要する業務に従事するための資格で、より高い専門性が求められます。
技能実習から特定技能への移行対象となるのは、主に技能実習2号を良好に修了した外国人です。ここで言う「良好に修了」とは、実習期間を満了し、技能検定3級またはこれに相当する技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格していることなどを指します。この条件を満たすことで、特定技能1号への移行が可能となります。
滞在期間については、「特定技能実習生は何年まで滞在できますか?」という質問が多く寄せられますが、特定技能1号は通算で上限5年までの在留が可能です。さらに、特定技能1号を修了し、所定の試験に合格することで、在留期間の更新に上限がなく、家族の帯同も可能となる特定技能2号へ移行できる道も開かれています。[1]
2024年6月に技能実習制度に代わる「育成就労制度」の創設を柱とする関連法が成立し、今後制度が大きく変更される見込みです。新制度では、原則として3年の就労期間で特定技能1号の水準まで人材を育成することを目指し、本人の意向による転籍(転職)も一定の要件下で認められるようになります。こうした法改正の動向は、移行手続きや人材の流動性に影響を与える可能性があるため、常に最新の情報を政府機関のウェブサイト等で確認することが重要です。現行の技能実習生を長期的な戦力として確保するためにも、特定技能への移行は極めて重要な戦略と言えるでしょう。(参考:特定技能実習生 廃止 動向)
| 区分 | 技能水準 | 在留期間 | 家族帯同 | 主な移行元 |
|---|---|---|---|---|
| 特定技能1号 | 相当程度の知識・経験 | 通算上限5年 | 原則不可 | 技能実習2号修了者、新規試験合格者 |
| 特定技能2号 | 熟練した技能 | 更新上限なし | 要件を満たせば可(配偶者・子) | 特定技能1号修了者 |
特定技能評価試験の免除条件と例外(製造業のケース)
技能実習生が特定技能へ移行する際の最大のメリットの一つが、技能評価試験と日本語能力試験の免除です。通常、外国人が特定技能1号の資格を得るには、分野別に定められた技能評価試験と、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)のN4以上に合格する必要があります。[2]
しかし、技能実習2号を良好に修了した外国人は、これらの試験が全面的に免除されます。これは、3年間の技能実習を通じて、特定技能1号に求められる技能水準と日本語能力を既に有していると見なされるためです。
ただし、この試験免除には重要な条件があります。それは、従事した技能実習の職種・作業内容と、移行する特定技能の業務区分が一致していることです。例えば、製造業分野において、技能実習で「鋳造」の作業を行っていた実習生は、特定技能でも「鋳造」の業務に従事する場合に限り、試験が免除されます。もし、技能実習とは全く関連性のない分野(例:「鋳造」から「介護」)へ移行したい場合は、原則通り、希望する分野の技能評価試験と日本語試験を受験し、合格しなければなりません。
人事責任者としては、現在雇用している技能実習生の職種・作業内容が、特定技能制度のどの業務区分に対応するのかを正確に確認することが、移行手続きの第一歩となります。
技能実習生から特定技能への移行で得られるメリット・デメリット
技能実習生を特定技能へ移行させることは、企業にとって長期的な人材確保という大きなメリットをもたらしますが、一方で手続きの煩雑さやコスト増といった課題も存在します。人事戦略として移行を成功させるためには、これらのメリットとデメリットを天秤にかけ、自社の状況に合わせた対応策を事前に検討しておくことが不可欠です。ここでは、企業側が享受できる具体的な利点と、それに伴う潜在的なリスクを整理します。
企業側のメリット:長期雇用、採用コスト削減、事業継続性
技能実習生を特定技能へ移行させることで、企業は主に3つの大きなメリットを得られます。
| 項目 | 技能実習制度 | 特定技能制度 | 企業にとってのポイント |
|---|---|---|---|
| 在留期間 | 原則3年(最長5年) | 1号最長5年、2号は更新上限なし | 長期雇用による人材定着 |
| 転職の可否 | 原則不可 | 原則可能(同一分野内) | 人材流動性への対応 |
| 家族帯同 | 不可 | 1号は原則不可、2号は要件を満たせば可 | 優秀な人材の定着に影響 |
| 支援義務 | 監理団体が支援(企業は指導) | 受入れ企業が支援(登録支援機関に委託可) | 支援体制の構築が必須 |
| 採用・教育コスト | 期間満了ごとに発生 | 移行により大幅削減、再教育不要 | 経営効率向上 |
| 事業継続性 | 期間満了で人材流出リスク | 安定的な人材確保、技能承継 | 生産性維持・向上 |
- 長期的な人材確保と安定した雇用
技能実習制度の在留期間が原則3〜5年であるのに対し、特定技能1号では最長5年間の就労が可能です。これにより、通算で最大10年近く、同一の従業員を雇用し続けることができます。さらに特定技能2号へ移行すれば、在留期間の更新に上限がなくなるため、永続的な雇用も視野に入ります。熟練した人材の定着は、生産性の向上と組織力の強化に直結します。
- 採用・教育コストの大幅な削減
新たに海外から人材を採用する場合、募集、選考、渡航手続き、そして入社後の教育に多大なコストと時間がかかります。一方、既に技能実習生として貴社の業務内容や文化を熟知している人材を継続雇用する場合、これらの採用・再教育コストはほとんどかかりません。これは、経営効率の観点から非常に大きな利点です。
- 事業継続性の向上
日本の生産年齢人口が減少を続ける中、特に製造業における人材不足は深刻な経営課題です。「特定 技能 実習 生 受け入れ」は、この課題に対する有効な解決策となります。技能と経験を積んだ外国人人材を安定的に確保することで、技能の承継がスムーズに進み、生産ラインの維持・拡大が可能となり、企業の持続的な成長、すなわち事業継続性を高めることができます。
移行における潜在的なデメリットと対応策
多くのメリットがある一方で、移行に伴うデメリットや注意点も存在します。これらを事前に把握し、対策を講じることが重要です。
- 手続きの煩雑さと時間
在留資格変更許可申請には、雇用契約書や支援計画書など、多数の専門的な書類を作成・提出する必要があります。これらの手続きは複雑で、人事担当者の負担が大きくなる可能性があります。
【対応策】:出入国在留管理庁への申請手続きに詳しい行政書士事務所や、後述する登録支援機関といった専門家のサポートを活用することで、手続きを円滑かつ正確に進めることができます。
- 追加費用の発生
申請そのものにかかる印紙代に加え、登録支援機関に支援業務を委託する場合は、月々の支援委託料や申請代行手数料が発生します。自社で支援する場合でも、担当者の人件費や支援にかかる実費が必要です。
【対応策】:事前に複数の登録支援機関から見積もりを取り、サービス内容と費用を比較検討することが重要です。長期的な視点でコストパフォーマンスを判断しましょう。
- 支援体制の構築と義務の発生
特定技能外国人を受け入れる企業には、生活オリエンテーションの実施や住宅確保の支援、定期的な面談など、法律で定められた支援計画の実施義務が課せられます。これは、技能実習制度における監理団体が担っていた役割の一部を、受入れ企業が直接(または登録支援機関を通じて)行うことを意味します。
【対応策】:自社で支援体制を構築するか、専門知識を持つ登録支援機関に委託するかを早期に決定します。社内に担当者を配置し、支援に必要な知識を習得させるための研修なども有効です。この管理体制の構築は、「特定技能実習生 問題点」として挙げられる離職等を防ぐ上でも極めて重要です。
特定技能への移行手続き:具体的なステップと流れ
技能実習生から特定技能への移行を成功させるためには、計画的かつ正確な手続きが求められます。手続きは大きく分けて、企業側での準備・体制構築と、出入国在留管理庁への在留資格変更許可申請の2つのフェーズで構成されます。「技能実習生から特定技能生になるには?」という疑問を解消するため、ここでは製造業の人事担当者が実際に何をすべきか、具体的なステップと必要書類を詳細に解説します。
社内で準備すべき事項と体制構築
在留資格の変更申請を行う前に、企業として以下の準備を整える必要があります。これらは申請の前提条件となるため、漏れなく進めましょう。
| ステップ | 主な内容 | 担当部署/機関 | 目安期間 | 留意点 |
|---|---|---|---|---|
| 1. 移行要件確認 | 技能実習2号の良好修了、職種の一致など | 人事担当者 | 随時 | 試験免除の可否を確認 |
| 2. 雇用契約締結 | 特定技能雇用契約、日本人と同等以上の報酬 | 人事担当者 | 1週間〜 | 給与水準に注意 |
| 3. 支援計画作成 | 生活・職業・社会生活支援計画の策定 | 人事担当者 or 登録支援機関 | 1〜2週間 | 自社支援か委託かを決定 |
| 4. 必要書類準備 | 雇用契約書、支援計画書、各種証明書など | 人事担当者 or 行政書士 | 2〜4週間 | 書類不備がないよう確認 |
| 5. 在留資格変更申請 | 出入国在留管理庁へ申請 | 人事担当者 or 行政書士 | 申請後2〜3ヶ月 | 申請期間は余裕を持って |
| 6. 審査・許可 | 審査結果の通知、在留カード交付 | 出入国在留管理庁 | – | 許可後速やかに受入れ準備 |
| 7. 受入れ開始・支援実施 | 支援計画に基づき支援を実施 | 人事担当者 or 登録支援機関 | 継続的 | 四半期ごとの報告義務 |
- 特定技能雇用契約の締結
移行対象となる外国人と、特定技能外国人としての新たな雇用契約を締結します。この際、最も注意すべき点は報酬額です。特定技能外国人の給与は、同等の業務に従事する日本人従業員の報酬額と同等以上でなければならないと定められています。不当に低い給与設定は認められないため、社内の給与規程と照らし合わせ、適切な金額を設定してください。(参考:特定 技能 実習 生 給与)
- 1号特定技能外国人支援計画の作成
特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、職業生活上、日常生活上、社会生活上の支援を行うための詳細な「支援計画」を作成する義務があります。この計画には、事前ガイダンスの提供、出入国の際の送迎、住居確保の支援、日本語学習機会の提供など、法定された10項目の支援内容を具体的に盛り込む必要があります。[1]
- 支援体制の決定(自社支援 or 外部委託)
作成した支援計画は、自社で実施するか、国の登録を受けた「登録支援機関」に全て委託することができます。自社で支援する場合は、支援責任者と支援担当者を選任し、外国人が安心して就労・生活できる体制を構築する必要があります。支援業務のノウハウがない、またはリソースが不足している場合は、登録支援機関への委託が現実的な選択肢となります。
在留資格変更許可申請の流れと必要書類
社内準備が整ったら、いよいよ出入国在留管理庁へ在留資格変更許可申請を行います。申請は、原則として対象となる外国人の在留期間が満了する前に行う必要があります。
【申請の主な流れ】
- 必要書類の準備:受入れ機関(企業)と申請人(外国人本人)がそれぞれ必要書類を準備します。
- 申請書の提出:企業の所在地を管轄する地方出入国在在留管理局に、準備した書類一式を提出します。
- 審査:出入国在留管理庁にて、提出された書類に基づき、要件を満たしているかの審査が行われます。(審査期間:約1〜3ヶ月)
- 結果の通知:審査が完了すると、結果が通知されます。許可の場合は、新しい在留カードが交付されます。
【主な必要書類(製造業の場合)】
必要書類は多岐にわたりますが、ここでは主要なものを抜粋して紹介します。詳細は必ず出入国在留管理庁の公式サイトで最新情報を確認してください。
<受入れ機関(企業)が準備する書類>
- 在留資格変更許可申請書
- 特定技能所属機関の概要書
- 登記事項証明書、直近の決算書類の写し
- 特定技能雇用契約書の写し、雇用条件書の写し
- 1号特定技能外国人支援計画書の写し
- 製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会への加入証明書
<申請人(外国人本人)が準備する書類>
- 証明写真
- パスポート及び在留カードの提示
- 技能実習2号を良好に修了したことを証明する書類(技能検定3級の合格証書など)
これらの書類を不備なく揃えることが、スムーズな審査と許可取得の鍵となります。
特定技能移行にかかる費用と期間の具体的な目安
技能実習生から特定技能への移行を検討する際、人事責任者が最も気になるのが「どれくらいの費用と期間がかかるのか」という点でしょう。移行コストは、支援業務を自社で行うか、登録支援機関に委託するかによって大きく異なります。また、申請から許可までの期間も、書類準備の進捗状況に左右されます。ここでは、具体的な費用の内訳と所要期間の目安を示し、貴社の予算計画とスケジュール策定を支援します。
登録支援機関への依頼費用と自社支援の場合のコスト
特定技能外国人の支援は、企業の義務です。その実施方法によってコスト構造が変わります。
【登録支援機関へ委託する場合】
多くの企業が選択するのが、専門家である登録支援機関への委託です。費用は機関によって様々ですが、一般的な相場は以下の通りです。
- 在留資格変更申請サポート費用:1人あたり 50,000円〜150,000円程度(書類作成代行など)
- 月次支援委託料:1人あたり月額 20,000円〜40,000円程度(定期面談、相談対応など)
登録支援機関は全国に多数存在し、サービス内容や料金体系も様々です。どの機関が自社に合っているかを見極めるのは容易ではありません。このような課題を解決するのが、テクロ株式会社が運営する外国人採用ポータルです。このポータルでは、地域や業種、対応言語などの条件で登録支援機関を検索・比較し、無料で相談できます。自社でWeb集客の方法が分からなかったり、提案できる企業数が少なかったりする支援機関にとっても、発注確度の高いリードを獲得できるメリットがあります。「外国人採用ポータル」は、専任スタッフが案件内容を事前に確認・審査するため、企業と支援機関のミスマッチを防ぎ、効率的なマッチングを実現します。
【自社で支援する場合】
自社で支援体制を構築する場合、外部への委託費用はかかりませんが、内部コストが発生します。
- 人件費:支援担当者の人件費。他の業務と兼任する場合でも、支援業務に割く時間分のコストがかかります。
- 体制構築コスト:支援担当者向けの研修費用や、多言語対応のマニュアル作成費用など。
- 実費:空港への送迎交通費、各種手続きの同行費用、通訳が必要な場合の通訳費用など、支援活動に伴う実費。
初期投資は抑えられる可能性がありますが、支援の質を担保し、法令を遵守するためのノウハウとリソースが社内に必要となります。
申請費用とその他の付帯費用
上記の支援コストに加え、以下の実費が必要となります。
- 在留資格変更許可申請手数料:許可が下りた際に、収入印紙で4,000円を納付します。[3]
- 健康診断費用:申請前に、本人が指定された項目を含む健康診断を受ける必要があります。費用は医療機関により異なりますが、10,000円前後が目安です。
- 各種証明書の発行手数料:住民票や納税証明書など、公的な書類の取得にかかる手数料です。
- 書類の翻訳費用:母国語の書類を日本語に翻訳する必要がある場合、翻訳会社への依頼費用がかかります。
全体の手続きにかかる期間とその短縮のポイント
申請準備から在留資格変更の許可が下りるまでの期間は、一般的に2ヶ月〜3ヶ月程度が目安とされています。ただし、これは書類に不備がなく、審査がスムーズに進んだ場合の期間です。
【期間の内訳】
- 書類準備期間:約2週間〜1ヶ月。企業の規模や担当者の習熟度により変動します。
- 出入国在留管理庁の審査期間:約1ヶ月〜3ヶ月。申請が集中する時期は長くなる傾向があります。
手続き期間を短縮するための最も重要なポイントは、申請書類を完璧な状態で提出することです。書類の不備や記載漏れがあると、追加資料の提出を求められ、その分審査が長引いてしまいます。人事責任者としては、以下の点を徹底することがスムーズな移行につながります。
- 早めの準備開始:在留期間満了の3ヶ月前には準備に着手するのが理想です。
- 専門家の活用:自社での対応に不安がある場合は、迷わず行政書士や登録支援機関に相談しましょう。専門家の知見を活用することで、ミスを防ぎ、結果的に時間を節約できます。
- 社内連携の強化:経理部(決算書類)や現場(本人の業務評価)など、関連部署との連携を密にし、必要書類を迅速に収集できる体制を整えておきましょう。
移行後の特定技能外国人雇用で注意すべきポイント
在留資格変更の許可が下り、晴れて特定技能外国人として雇用を開始した後も、企業の責任は続きます。むしろ、ここからが安定した雇用関係を築き、彼らに長く活躍してもらうための本番と言えるでしょう。企業には、作成した支援計画を着実に実施する義務と、行政へ定期的に状況を報告する義務が課せられます。これらの義務を怠ると、最悪の場合、特定技能外国人の受入れができなくなる可能性もあるため、法令遵守の意識を常に高く持つことが求められます。
支援計画の作成と実施義務
在留資格申請時に提出した「1号特定技能外国人支援計画」は、提出して終わりではありません。計画に記載した内容を、責任を持って実施する義務があります。支援内容は多岐にわたりますが、特に重要な項目は以下の通りです。[1]
- 事前ガイダンス:雇用契約の内容や日本での活動内容、入国手続きについて、本人が理解できる言語で説明します。
- 出入国する際の送迎:入国時には空港等から事業所または住居へ、帰国時には保安検査場まで同行し、送迎を行います。
- 住居確保・生活に必要な契約支援:連帯保証人になる、社宅を提供するなどして住居を確保し、銀行口座の開設や携帯電話の契約などを支援します。
- 生活オリエンテーション:日本のルールやマナー、公共機関の利用方法、災害時の対応などについて説明します。
- 公的手続き等への同行:必要に応じて、市区町村での住民登録や社会保障・税に関する手続きに同行します。
- 日本語学習の機会の提供:本人が希望する場合、日本語教室の情報を提供するなど、学習機会を確保します。
- 相談・苦情への対応:職業生活や日常生活に関する相談・苦情について、本人が理解できる言語で適切に対応し、必要な助言や指導を行います。特に、技能実習制度と異なり、特定技能では同一業務区分内での転職が可能になるなど、本人の権利が拡大します。労働基準法で保護される労働者としての基本的な権利(有給休暇の取得、正当な理由なき解雇の禁止、適切な労働時間管理など)を改めて周知し、人権を尊重した公正な処遇を徹底することが、信頼関係の構築と長期的な定着に不可欠です。
- 日本人との交流促進:地域のイベントへの参加を促すなど、日本人との交流の機会を設けます。
- 転職支援:会社の都合で雇用契約を解除する場合、次の受入れ先を探すための支援を行います。
- 定期的な面談の実施:支援責任者が、外国人本人およびその直属の上司等と3ヶ月に1回以上の頻度で面談し、労働状況や生活状況を確認します。
これらの支援を適切に行うことが、特定技能外国人の定着率向上とトラブル防止に繋がります。効果的なフォローアップのためには、支援計画を形式的なものに終わらせず、実効性のあるものにすることが重要です。例えば、定期面談では単に状況を確認するだけでなく、本人がキャリアパスを描けるような助言を行ったり、資格取得支援制度を設けたりすることが定着に繋がります。また、日本人従業員とのコミュニケーションを促進するための社内イベントの企画や、メンター制度の導入も有効なフォローアップ策です。こうした継続的な関与が、外国人人材が孤立せず、組織の一員として活躍するための基盤となります。
定期報告義務と監査への対応
特定技能外国人を受け入れた企業は、出入国在留管理庁に対し、定期的に届出を行う義務があります。これにより、行政は受入れ状況が適正かどうかを監督します。
【主な定期届出】
- 受入れ状況に係る届出:四半期に一度、受入れている特定技能外国人の氏名や活動日数、報酬の支払状況などを報告します。
- 支援実施状況に係る届出:四半期に一度、支援計画に基づき実施した支援内容を報告します。
- 活動状況に係る届出:四半期に一度、特定技能外国人の活動状況(離職や行方不明など)を報告します。
これらの届出を怠ると指導や改善命令の対象となり、従わない場合は受入れ停止となる可能性があります。また、出入国在留管理庁は、届出内容の確認や制度の適正な運用を確認するため、予告なく企業への立入調査(監査)を行うことがあります。その際に、支援の実施記録(面談記録簿など)や賃金台帳などの提示を求められるため、日頃から関係書類を適切に整理・保管しておくことが極めて重要です。監査に適切に対応できる体制を整えておくことも、企業の重要なリスク管理の一つです。
まとめ:貴社の事業継続性を高める特定技能活用戦略
本記事では、技能実習生を特定技能へ移行させるための条件、手続き、メリット・デメリット、そして費用や期間について、製造業の人事責任者の視点から網羅的に解説してきました。技能実習制度が人材育成と国際貢献を目的とするのに対し、特定技能制度は人手不足に対応するための労働力確保を目的としています。この特定技能と技能実習生の違いを理解し、制度を戦略的に活用することは、貴社の事業継続性を高める上で非常に有効な一手となります。
移行プロセスは複雑であり、多くの準備が必要です。しかし、それを乗り越えることで、貴社を熟知した貴重な人材を長期的に確保できるという、計り知れないメリットが得られます。このプロセスを成功させるためには、信頼できるパートナーとの連携が不可欠です。以下に、それぞれのニーズに応じた専門機関を紹介します。
- 制度の正確な情報収集:国際人材協力機構 (JITCO)などの公的機関から、最新かつ正確な情報を得ることが基本です。
- 新規の人材採用:移行だけでなく、新たな特定技能人材の採用も検討する場合は、マイナビグローバルのような人材紹介サービスが有力な選択肢となります。
- 申請手続きの代行:複雑な在留資格申請を専門家に任せたい場合は、行政書士事務所への依頼が確実です。
- 移行後の日本語教育強化:定着支援の一環として、より高度な日本語教育を提供したい場合は、Gakken BB (学研ビジネスサポート)のような教育専門企業のサービスも役立ちます。
- 継続的な監理・支援:技能実習からお世話になっている協同組合(監理団体)が登録支援機関の許可も得ている場合、引き続き支援を依頼することも可能です。
そして、自社に最適な登録支援機関や紹介会社を見つけるためのプラットフォームとして、外国人採用ポータルの活用をぜひご検討ください。外国人採用ポータルは、監理団体・登録支援機関・外国人紹介会社と採用企業をつなぐ比較マッチングポータルです。全国の支援機関を地域や業種で検索し、サービス内容を比較した上で、無料で相談することができます。信頼できるパートナーを見つけ、特定技能への移行を成功させ、貴社の未来を担う人材を確保しましょう。
よくある質問
技能実習生と特定技能の違いは何ですか?
技能実習制度が人材育成を目的とするのに対し、特定技能制度は人手不足解消を目的とした在留資格です。特定技能は最長5年間就労可能で、特定技能2号へ移行すれば在留期間の上限がなくなります。また、技能実習2号を良好に修了すれば、試験免除で特定技能1号へ移行できます。
特定技能外国人は何年まで日本に滞在できますか?
特定技能1号の外国人は通算で最長5年間滞在可能です。さらに、特定技能1号を修了し所定の試験に合格すれば特定技能2号へ移行でき、その場合は在留期間の上限なく日本に滞在し続けることができます。
技能実習生から特定技能へ移行するにはどうすればいいですか?
技能実習生から特定技能へ移行するには、まず技能実習2号を良好に修了していることが必須です。その上で、技能実習で培った職種・作業内容と移行先の特定技能の業務区分が一致していれば、試験が免除され、在留資格変更許可申請を経て特定技能へ移行できます。
特定技能外国人を受け入れる企業の条件は何ですか?
特定技能外国人を受け入れる企業は、日本人と同等以上の報酬で雇用契約を結び、「1号特定技能外国人支援計画」を作成・実施する義務があります。また、業種によっては「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」のような関連協議会への加入も求められます。
技能実習生を特定技能へ移行させる企業側のメリットは何ですか?
技能実習生を特定技能へ移行させる最大のメリットは、長期的な人材確保です。最長5年間(特定技能2号なら期間上限なし)の雇用が可能となり、新たな採用・教育コストを大幅に削減できるため、企業の生産性向上と事業継続性の強化に繋がります。
参考文献
- [1] 特定技能ガイドブック — 出入国在留管理庁・厚生労働省
- [2] 新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組について — 出入国在留管理庁
- [3] 手数料一覧 — 出入国在留管理庁